2017年 04月 05日 ( 1 )
1 3月26日(日)に立教大学7201教室で行われたハイデガー研究会3月例会(二回目)には、学部生も参加していただけるなど、盛会となりました。その模様をご報告いたします。 「黒ノート」(金成祐人氏訳)検討会では、ÜberlegungenⅥの37から42までが、森正樹氏によって検討されました。37では、創造や歴史について議論され、若干の者にのみ到達できる僅かなものと多くの者に到達できる安易で凡庸なものとが対比されました。ユニークであったのは、単に安易で凡庸なものが否定的に捉えられるだけではなく、それらは稀なものや到達することが困難なものであり続けるために必要なものであるとされたことです。 38では、史学的ではない歴史へと到達するためには、存在者を転覆させる道と存在(Seyn) が変化する道の二つがあり、両者ともに互いを必要とし合うとされました。そして、39では、事物をより偉大なものにするかそれとも凡庸なものにするかが委ねられているがゆえに、現存在には特別な地位が属しているとされました。 やや長めの40では、「われわれがどこに立っているのか?」という問いをめぐって、「われわれとは誰か(wer)」という問いが「どこ(wo)」の問いと密接な関係にあることが、「史学」や「心理学」とは異なった仕方で探求されるべきであることや、立つことがもしも現-存在の内へと出で立つことを意味するとすれば、われわれはまだ立っていないのではないかということが示唆されました。41では、ワーグナーやチェンバレンへと言及しながら、当時のニーチェ研究の状況についての不十分さが指摘され、42では創造と世界観との関係が議論されました。四月のハイデガー研究会例会(4/30)では、43から50までを検討予定です。 後半のプログラム、加藤皓士氏による研究報告「本来的現存在において無性が持つ意味について ―投げられた根拠存在をどう理解すべきか」では、『存在と時間』における負い目ある存在(Schuldigsein)について、根拠存在や無力であること、被投性・事実性などの概念を照明しながら議論されました。その際、根拠存在としての現存在がすでにあるところ(世界や存在者の総体)から自己を企投するという点が強調され、ある可能性を選び取るときにはすでに自己の理解がなされてしまっており、この意味で存在可能性に立ち遅れていると指摘されました。そのうえで本来的に負い目ある存在になる可能性へと自己を企投することとは、これまでに選ばれなかった可能性を担い直すことであり、過去の選択を辿り直すことであると主張されました。 報告後の質疑応答では、企投における「無(Nicht)」の理解や事実性の解釈の確認のほか、根本気分である不安と本報告の議論との関係、本来性における負い目の位置づけ、そして本報告の主張である「可能性を担い直すこと」とは何かなどについて、活発に議論されました。 次回ハイデガー研究会例会は、4月30日に開催予定です。ぜひご参集ください。
■
[PR]
▲
by HeideggerAT
| 2017-04-05 19:39
1 |
リンク
ハイデガー研究会にかんするお問い合わせは下記までお寄せください。
heidegger.tokyo[a]gmail.com ([a]を@へ変更してください) 公式ツイッター: https://twitter.com/#!/HeideggerTokyo ハイデガー・フォーラム (Heidegger-Forum in Japan) 実存思想協会 (Japanese Society of Existential Thought) 関西ハイデガー研究会 ゲーテ・インスティテュート Ereignis ライフログ
以前の記事
2018年 04月
2018年 03月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 09月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 お気に入りブログ
最新のトラックバック
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||
外部サイトRSS追加 |
||