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国際ワークショップ報告

「国際ワークショップ・レヴィナス、ハイデガー、ニーチェ――ディディエ・フランク氏を迎えて」が2013年12月15日(日)、東京大学本郷キャンパス東洋文化研究所・大会議室にて開催されました。

今回は、ディディエ・フランク氏を囲んで、UTCP主催、ハイデガー研究会・レヴィナス研究会・CPAG共催、ショーペンハウアー協会ニーチェ部会協賛という5団体の協力による大規模なワークショップ。70名以上の参加者が集まり、席が足りなくなるほどの盛況ぶりでした。

第一部では、レヴィナス研究会、ハイデガー研究会、ニーチェ部会の順で研究発表が行われ、それぞれの発表ののち、フランク氏からのコメントと質疑応答、そしてフロアとのディスカッションが交わされました。

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最初の発表は、小手川正二郎(明治大学・日本学術振興会)氏の司会のもと、平石晃樹(東京大学・ストラスブール大学)氏が「「存在論は形而上学を前提とする」:『全体性と無限』におけるレヴィナスの存在論について」(" L'ontologie suppose la métaphysique ": l'ontologie lévinassienne
dans Totalité et infini.)と題して発表。レヴィナスの存在論の核心を、存在論と倫理学という対立図式ではなく、形而上学を中心に見定めてゆく試みでした。

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二番目の発表は、陶久明日香(学習院大学)氏の司会のもと、茂牧人(青山学院大学)氏が「もう一つのキリスト教は可能か?」(Ist ein anderes Christentum möglich?)と題して発表。ハイデガーの存在史観を踏まえながら、古代ギリシアの哲学とキリスト教のいずれにも形而上学が潜在していることを指摘しつつ、キリスト教の新たな存在論的可能性を明らかにしようとする内容でした。

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三番目の発表は、梅田孝太(上智大学)氏の司会のもと、大久保歩(東京大学)氏が「身体とディオニュソス――ニーチェにおける正義」(The Body and Dionysus.)と題して発表。初期著作へと遡り、身体やディオニュソスの観点から中期以降の正義論を再考するとともに、正義の概念の新たな側面に光をあてる試みでした。

フランク氏からのコメントと応答も、それぞれの発表の核心に迫るもので、各発表者と氏の解釈との相違点も見事に浮彫りになったように思います。

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第二部では、馬場智一(東京大学CPAG)氏の司会のもと、ディディエ・フランク(パリ西大学)氏による講演が「印象の志向性」(L'intentionnalité de l'impression.)と題して行われました。フッサールの志向性を緻密に分析したうえで、最終的に原印象はそれ自体では成立するものではなく、予持と把持へと広がる脱現在化において捉えるべきであると結論。デリダやアンリ以後のフランス現象学における動向を睨みながら、氏の現象学理解を闡明にする講演でした。

レヴィナス、ハイデガー、ニーチェ、フッサールをめぐってそれぞれに専門性の高い議論が展開されたばかりでなく、相互に連関するトピックについても議論が交わされ、各研究団体も互いに大きな刺激を与えあうことができたように思います。これもひとえに、圧倒的に広い射程をそなえたフランク氏の哲学的力量のおかげで実現した相互交流と言えるでしょう。

主催の東京大学大学院総合文化研究科・教養学部付属 共生のための国際哲学センター(UTCP)のみなさん、共催の東京大学東洋文化研究所グローバル化時代における現代思想(CPAG)のみなさん、レヴィナス研究会のみなさん、協賛のショーペンハウアー協会・ニーチェ部会のみなさん、そしてご来場のみなさんに、この場を借りて御礼申し上げます。

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by HeideggerAT | 2013-12-17 14:10

ハイデガー研究会特別企画 森一郎著『死を超えるもの』合評会

ハイデガー研究会特別企画 森一郎著『死を超えるもの』合評会

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 あの時覚えた戦慄と恐怖は、いったい何だったのか。2011年3月11日に発生した未曾有の東日本大震災と原発事故から間もなく三年が経とうとしているが、この出来事に対する世間の関心は驚くほど急速に冷めてしまったように思われる。あれは極限状態に直面して覚えた一時の感情に過ぎなかったのだろうか。いや、そうではない。あの戦慄と恐怖は、私たちが築き、住んでいるまさにこの世界が傷つき壊れるという経験によって引き起こされたのである。そうであれば、私たちにとっての新たな課題は、自然を愛することではない。むしろ、この壊れた世界を愛することである――。
 この鮮烈な洞察を携え、骨太な哲学的思考によって現代日本の状況に舌鋒鋭く切り込む力作が今年、私たちの手元に届けられました。森一郎著『死を超えるもの――3.11以後の哲学の可能性』(東京大学出版会、2013年)がそれです。前著『死と誕生』(2008年)で氏は、「死」と「誕生」によって区切られた「いのち」の究明を試みていました。それに対して今著では一転、「死」を超えて永続する「世界」へと考察の目は向けられています。二人の友の死、そして勤務校の体育館の解体という出来事に促されながら、氏はハイデガーとアレントを手がかりに、震災と原発問題と正面から取り組むことによって「世界への愛」をめぐる哲学的考察を全面的に展開していきます。有限な人間の死を超えて、永続するこの世界に目を向ける氏の本格的な哲学的・政治的考察に、ハイデガー研究会も真剣勝負を挑みたいと思います。
 今回は、景山洋平氏(埼玉大学)、松本直樹氏(京都府立医科大学)、戸島貴代志氏(東北大学)らハイデガー研究の精鋭に加えて、著名なアレント研究者である矢野久美子氏(フェリス女学院大学)、そして近著『学校を災害が襲うとき――教師たちの3.11』(春秋社、2012年)でやはり震災問題の本質に鋭く迫った田端健人氏(宮城教育大学)、以上東西計5名のコメンテーターとして加わっていただき、古荘真敬氏(東京大学)の司会のもと、会場のみなさんとともに森氏を囲んで熱い議論を交わします。ハイデガーやアレント研究者のみならず、ひろく哲学に関心をお持ちの方、また震災原発問題や日本の未来に関心を寄せる方々にぜひご参集いただければと思います。なお、合評会後は森氏を囲んで懇親会も開催の予定です。みなさまのご参加、心よりお待ちしています。

日時:2014年1月26日(日)13:00~18:00
場所:東京大学駒場キャンパス18号館コラボレーションルーム1

13:00-13:10 司会あいさつ・著者あいさつ
13:10-13:50 セッション1:景山洋平(埼玉大学)
13:50-14:30 セッション2:松本直樹(京都府立医科大学)
14:30-15:10 セッション3:戸島貴代志(東北大学)
15:10-15:30 コーヒーブレイク
15:30-16:10 セッション4:矢野久美子(フェリス女学院大学)
16:10-16:50 セッション5:田端健人(宮城教育大学)
16:50-18:00 総合討論
司会:古荘真敬(東京大学)

予約不要・参加自由

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by HeideggerAT | 2013-12-12 12:52