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ハイデガー研究会4月例会報告

ハイデガー研究会4月例会報告

去る2013年4月28日(日)、法政大学大学院棟202教室でハイデガー研究会例会が開催されました。

前半は、陶久明日香氏(学習院大学)担当による訳読。4月より輪読テクストはハイデガー全集第11巻『同一性と差異性』に変更し、「それは何か――哲学とは?」を読み始めました。このテクストは、ジャン・ボーフレの招きによりスリジー・ラ・サールで行われた講演原稿。「哲学とは何か」という問いに対して性急に答えを求めるのではなく、「ピロソピア」というギリシア語の由来にさかのぼって考えることが「原子力時代」たる現代を考えるよすがにもなる、とハイデガーは主張します。「哲学」をめぐるハイデガーの凝縮された思考について、陶久氏の訳読を手引きに活発な議論が展開しました。

後半は、ハイデガー研究会の新企画の打合せ。中堅と若手が中心になり、企画内容について検討しました。いよいよ新企画が本格的に始動です。

次回のハイデガー研究会は、5月18日(土)13:00‐18:00に開催予定。開催場所は決定次第お知らせいたします。

なおハイデガー研究会では、発表希望を随時受け付けています。学会発表・研究会発表の準備や学位論文の草稿などの検討の場としてご遠慮なくご活用ください。ご連絡は、heidegger.tokyo[a]gmail.comまでどうぞ。
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by HeideggerAT | 2013-04-30 23:05

ハイデガー研究会4月例会案内

ハイデガー研究会4月例会案内

日時:2013年4月28日(日)15:00~19:00
会場:法政大学大学院棟202教室
(当初案内の201教室から変更となりました。ご注意ください。)
http://goo.gl/8rhfz
http://goo.gl/maps/yKMjr

<プログラム>
1. 輪読会 15:00~17:00 「それは何か――哲学とは」(GA11)
担当:陶久明日香(学習院大学)
訳読範囲:GA11, S. 7-12(第一段落のおわり、...griechische Frageまで)。

2. 翻訳プロジェクトの打ち合わせ17:15-19:00

<案内文>
 新年度のハイデガー研究会は、全集11巻『同一性と差異性』所収のテクストを順に読んでいきます。最初の訳読テクストは Was ist das - die Philosophie?です。
 今年度の目標は、小品ながら含蓄に満ちた後期ハイデガーの論文を読み進めることで、ハイデガー晩年の思考の帰趨を探ることにあります。
 ハイデガー哲学を学ぶにあたって、後期思想も初期・前期や中期の思想とまったく無関係であるわけではありません。以前の自らの考察の前提を問い返しさらなる深みへと突き進んでゆくという点で、各時期のハイデガーの思想はさまざまなかたちで連関しています。そのため、初期・前期・中期各時代を研究している方々をはじめ、技術や芸術などといった多様な関心をもつ方々にとっても、有益な議論を楽しめることと思います。
 とりわけ今回より読み始める「それは何か――哲学とは?」では、初期以来の長年の自らの思考を踏まえて、高度に凝縮されたハイデガーの「哲学観」が披露されています。ぜひみなさんと一緒に刺激的な議論を展開できればと思っています。ご参加をお待ちしています。

 また、新たな企画として翻訳プロジェクトを開始いたします。ハイデガー研究会メンバーが中心となり、ハイデガー関連の論集の翻訳を行ってゆく予定です。次回研究会では、参加者のみなさんと候補をいくつか検討のうえ選定し、翻訳担当者についても具体的に決めていきたいと考えています。
 それにおうじて今年度は、輪読・発表に加えてこの翻訳原稿の検討も本研究会のプログラムに組み込んでいきたいと思います。とくに若手の方々には、この機会を積極的に活用してご自身の研究や業績に役立てていただきたいと思います。関心をお持ちの方はぜひご参集ください。
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by HeideggerAT | 2013-04-02 01:34

川口茂雄著『表象とアルシーヴの解釈学』合評会報告

川口茂雄著『表象とアルシーヴの解釈学』合評会報告

去る3月17日(日)、法政大学大学院棟201教室にて、川口茂雄著『表象とアルシーヴの解釈学』合評会が行われました。

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まず冒頭で川口氏から挨拶。「リクールを論じるにあたって、今の日本ではこれ以上ありえないほど豪華な面々」と川口氏の評する三名の論客とともに、本合評会の幕は切って落とされました。川口氏の著書は、難解で知られるリクール最晩年の大著『記憶、歴史、忘却』を論じた世界でもおそらく初めてのモノグラフィーとして、分量、内容ともにきわめて重厚なもの。合評会もそれにふさわしく、解釈学的事柄の本質に迫る本格的な議論が展開しました。

セッション①「記憶」では、川崎惣一氏(宮城教育大学)がリクール「記憶の現象学」をめぐる川口氏の理解を敷衍しつつ、非反省的で「パトス的」な想起ないし記憶のもつ「幸福」の意味とは何かを問いかけたのに対して、質疑を通してそうした想起ないし記憶の「両義性」が浮き彫りになりました。

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次いでセッション②「歴史」では、鹿島徹氏(早稲田大学)が物語り論としての歴史記述の意義をめぐって質問。それによれば、リクールの「縮尺のヴァリアシオン」は「多様な要素を統合してユニークな統一体へと統合するコンフィギュラシオンとしての物語り行為」であり、そうした物語り行為が歴史記述の「真実性要求」の基礎づけに寄与しうるものと考えられるとされます。川口氏との質疑では、この点にかんして基本的に意見の合致が見出されながらも、そこに多層性・多重性が見出されるという点が際立たせられました。

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その後約十分の休憩をはさんで、セッション③「忘却」では、佐藤啓介氏(聖学院大学)がリクールの書物とそれに対する川口氏の解釈との相関関係を踏まえつつ、そこでの川口氏の取捨選択の戦略を中心に質問。佐藤氏は、冷戦以後のきわめて現実的な文脈と場面でリクールの歴史的な知の考察を活性化させるという川口氏の独自性を評価する一方、歴史の判決・判断の根拠が「市民」という「共同体」だけに求められるものではないのではないかと指摘。「忘却」における「神の記憶」の概念と絡んでさらに展開された質疑では、「忘却」という事柄そのものの困難さが議論の中心となりました。

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続くフロアとの全体討議でも、アレントとの関係、忘却と赦しの関係などにかんする質疑が相次ぎ、予定時間を30分以上超過して終了となりました。

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狭くリクール研究に閉じこもることなく、現象学や解釈学、そして現代の政治的状況をも見据えつつ、記憶とは何か、歴史とは何か、忘却とは何か、という問いに正面からぶつかり、事柄を掘り下げてゆく川口氏のダイナミックな考察に、参加者はさまざまな刺激を受けたはずです。それだけに、次回の著書に託されたハイデガーとの対決への期待もいやがうえにも高まります。川口氏、そしてコメンテーターを務めていただいた川崎氏、鹿島氏、佐藤氏、そしてお集まりいただいたフロアの皆さんに、この場を借りて御礼申し上げます。
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by HeideggerAT | 2013-04-02 01:13