ハイデガー研究会2016年11月例会報告

2016年11月13日(日)に、立正大学品川キャンパスで行われた、ハイデガー研究会11月例会について報告します。

今回は、前半は『黒ノート』(ハイデガー全集94巻)の輪読会(担当、陶久明日香氏)、後半は、川端愛氏による研究発表「がんの治療のラストラインを迎えた患者さんの語り」でした。

前半の『黒ノート』輪読会は、今回より金成祐人氏の下訳をもとに、ÜberlegungenⅥからのスタートとなりました。今回の箇所では、用語上の問題としては、WesenやAbgründeをどう訳すのか、内容的には、「神々からの解放」と「偶像」との関係、民族の「空間」と「場所Platz」との相違、「古典主義」や「歴史主義」への批判的言及などが、議論されました。特に、カントの『判断力批判』を示唆するような「嗜好Geschmack」と「美しさ」との関係性などについて、検討されました。
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後半の川端愛氏による研究発表「がんの治療のラストラインを迎えた患者さんの語り」では、セカンドライン(がんが再発転移し治療を始めた段階)の患者さんへのインタビューの分析において、『存在と時間』におけるハイデガーの現存在分析、特に「死」や「共存在」の分析が有益であることが指摘されました。インタビューの中では、病気を受動的に引き受ける際は「我々」と語っていたのに、病気へと能動的に向かっていく際には「私」として語られるという一人称の問題、本能的な決定とそれを振り返ることとの関係、死を見つめたうえで「物・道具」との関わり方が変わっていくことなどが指摘され、それらがハイデガーの思想とどう結びつくのか/つかないのかについて、議論が盛り上がりました。

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次回のハイデガー研究会例会は12月18日(日)を予定しております。ぜひご参集ください。

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by HeideggerAT | 2016-11-30 22:48
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